〜社寺建築☆美の追求〜 大岡實の設計手法
 大岡實建築研究所
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建築史家としての大岡實 −文化財の保護と復元−
第一章で述べたように大岡實は大学卒業後、文部省嘱託となり古社寺保存に携わる。
大岡實は昭和41年10月大岡實先生定年退官記念事業会発刊「日本古建築の特質と私の半生」の中で次のように述べている。
「文部省の上司は関野貞先生で、今の文部省の関野克さんのお父さんです」、「文部省では、はじめは非日勤の嘱託で建造物の台帳を作ることが仕事でした」そして「関野先生が「文化財の仕事は大岡にまかせるよりしょうがない」と言い残された」ことで「どうしても先生のあとを継がなければならないと覚悟した」という。
この「文化財の仕事」に対する大岡實の思いは「世界に類のないほどよく残っている木造建築をなんとか最小限の保護だけはしてゆかねばならないという信念で当たった」「手がけてきた二千棟の国宝建造物が本当に子供みたいにかわいいんです」「日本の文化財的なものだけでなく、私はこの日本の風土が荒らされていくということが本当に日本の国民のために不幸なことだと思う」「自分に課せられた運命は文化財の保存だ」「文化財的なものが日本の国で満足に保存されていくように、力をかす仕事をしたい」というような言葉から十二分に伝わってくるのではなかろうか。
なお、文化財の保護と復元というテーマでの建築史家大岡實については多数の評論と評価がなされてきており、ここでは第四章の「主要著述目録」を示してその成果品の一端を垣間見ていただくにとどめたい。
そして大岡實は建築史家と同時に建築家としても大きな業績を残すことになるのだがそれは「建築史をやろうという動機の根本は、古建築の造形美にひきつけられたためであり、それゆえに日本古代建築の意匠原理を解明したいと思った」のであり「日本建築の意匠原理の解明は建築史家に課せられた大きな課題である」と同時に「建築歴史はデザインと結びつかなければなんの意味もない」という思いからは当然の帰結であったのかもしれない。

なお、文中の鉤括弧(かぎかっこ)の部分は昭和41年10月大岡實先生定年退官記念事業会発刊「日本古建築の特質と私の半生」より引用したものです。

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