~社寺建築☆美の追求~ 大岡實の設計手法
 大岡實建築研究所
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称名寺反橋(しょうみょうじそりばし)平橋(ひらばし)(神奈川県横浜市)
称名寺は、神奈川県横浜市金沢区金沢町にある真言律宗別格本山の寺院。山号は金沢山。本尊は弥勒菩薩。新四国八十八箇所霊場七十五番。北条氏の一族である金沢北条氏の祖、北条実時(1224年 - 1276年)が開基した。創建時期については確実なことはわかっていないが、1258年実時が六浦荘金沢の居館内に建てた持仏堂(阿弥陀堂)がその起源とされる。(ウィキペディアより引用)
10年計画で実施された称名寺庭園苑池保存整備事業の全体について、大岡實はその完成を記念して行われた記念講演会に際して草稿した「反橋・平橋の復元」において以下のように述べている。
「称名寺には、北条実時にはじまって顕時・貞顕の三代にわたる造営が完了した直後、何かの法会のために画かれたと考えられる元亨三年(1323)の結界図が残っていて、伽藍は、平安時代以後、盛んに造られた苑池をもつ庭園形式をとっていたことが明らかであり、池に反橋・平橋があったことを知り得るが、この苑池を中心にした寺院庭園において反橋・平橋を掛ける形式は当時この種の庭園において様式化されていたようで、法然上人絵伝にも称名寺と同じ位の規模と思われる反橋・平橋の詳細な図が画かれている事によって知り得るが、この種の寺院庭園における反橋・平橋は重要な景観であって、是非その復原が期待された。
今回の称名寺の復原整備事業は、地下遺構の学術調査によって、出来るだけ創建の規模を知って当初の形に復原すると言うのが根本方針であるが、橋については、現状では貧弱な小さな石の橋になっていて、旧規模が判明するか否か危ぶまれたのであるが、幸いなことに反橋の4組と平橋の1組の橋脚が残っていた。31~32糎位の柱を前後に貫で締めた構造であって、桁行12尺(縦の方向、柱間4間)、梁行9.5尺(巾)の規模であったことが明らかになった。この橋脚は仕事が堅固であり丁寧であって、創建時のものに相違ない。唯疑問なのは、多くの場合、中央の二間は柱間を縮めて中央の柱を抜いている。称名寺の場合、中央の柱の橋脚は発見されなかったが、両脇の柱間は縮小されず12尺2間の24尺となっている。木造建築として24尺は構造上、少し無理があると思われたので、中央に柱を建てることとした。中央を広くするのは恐らく舟の出入の便のためであろうが12尺あれば舟の出入に問題はないと思われる。
扨、橋の形式であるが橋はその勾欄の形式によって、決まるといってよい。結界図は伽藍全体の規模についてはかなり正確に画かれていると思われるが細部の描写はあまり詳しくなく、判り難いが、よく見ると、それは当時最も一般に行われた擬宝珠柱を立てた、基準的な勾欄であったと判定できる。この判定が過ちでないことは前記の法然上人絵伝は詳細な図に画かれているが、立派な鎌倉時代の基準的勾欄であることによって、立証できるのであって、この復原は確実と考えられる。猶橋桁の側面は常軌に従って剣巴とした。一般には彩色の場合が多いようであるが、今回は保存を考えて銅板切抜とした。
平橋の橋脚は一組しか残っていなかったが、周囲の地形から、その規模の推定が容易であり、反橋よりの推定によって比較的容易に復原出来た。
寺観の重要部分である反橋・平橋が確実性をもって復原されたことは、今回の整備工事の大きな収穫であって、称名寺庭園の価値を大いに挙げたと言い得るであろう。」
註:結界図=重文「称名寺絵図並結界記」
反橋
反橋上から平橋方向を見る
平橋
浄土庭園とされる称名寺の庭園と苑池に浮かぶ反橋・平橋
現地説明板
反橋立面図

「昭和57年度称名寺庭園苑池保存整備報告書」より引用

平橋立面図

「昭和57年度称名寺庭園苑池保存整備報告書」より引用

反橋基礎設計図

「昭和57年度称名寺庭園苑池保存整備報告書」より引用

平橋基礎設計図

「昭和57年度称名寺庭園苑池保存整備報告書」より引用

反橋立面図(上)/平橋立面図(下)

「昭和57年度称名寺庭園苑池保存整備報告書」より引用

中央は竣工披露に招かれた松浦弘二
称名寺伽藍全景/中央に庭園が見える

「昭和57年度称名寺庭園苑池保存整備報告書」より引用

年月 西暦 工事名 所在地 工事期間 助手 構造設計 施工 構造種別
昭和56 1981 称名寺 反橋平橋復元 神奈川県横浜市 昭和54~60 松浦弘二 松本曄・安田工務店 安田工務店 木造一部RC造
復原橋設計:大岡實建築研究所(基本設計)、松本構造設計事務所(実施設計)
復原橋工事:㈱安田工務店(上部工事)、㈱加藤組(基礎工事)
㈱安田工務店 千葉県市原市八幡2062
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